鎌倉のアジサイを代表する寺院である北鎌倉の明月院。6月のアジサイや12月の紅葉の季節ともなると、観光客で大変な賑わいを見せます。一方で、冬場ともなると観光客の姿は少なくなり、本来の静けさの中でゆっくりとした散策を楽しむことが出来ます。
更新状況
- 2024年8月24日:2023年6月に撮影した写真2枚(アジサイと水鉢)を追加
- 2023年2月26日:点心庵へのリンクを設定
- 2022年3月20日:記事掲載
この記事の目次
明月院とは
明月院は、JR横須賀線、北鎌倉駅から徒歩およそ10分、鎌倉市山ノ内にある臨済宗建長寺派の寺院で、山号は福源山(ふくげんざん)、開山は密室守厳(みっしつしゅごん)、開基は上杉憲方(のりかた)とされています。
明月院はもとは明月庵といい、現在は廃寺となっている禅興寺(ぜんこうじ)の塔頭(たっちゅう)として成立しました。
明月院のある地域一帯は明月ガ谷(やつ)といい、平治の乱で戦死した首藤刑部大輔俊通(すどうぎょうぶたいゆうとしみち)の菩提を弔うため、その子、山ノ内經俊(つねとし)が明月庵を創建しました。
1256(康元元)年、第5代執権北条時頼が最明寺を創建したものの廃寺となり、その息子である8代執権北条時宗が、最明寺跡に蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)を開山として禅興寺を創建しました。
禅興寺は鎌倉五山に準じる大寺であったといわれ、鎌倉公方足利氏満(うじみつ)から禅興寺中興の命を受けた上杉憲方(のりかた)が寺域を拡大し、後に関東十刹(じっさつ)の一位となり、明月院は塔頭(支院)の首位とされました。
やがて明治の声を聞くと禅興寺は廃寺となり、筆頭の支院だった明月院だけが残りました。
【上杉憲方(のりかた)】関東管領として鎌倉公方足利氏満(うじみつ)を補佐。山内上杉氏の始祖とされる。明月院のほか極楽寺坂付近にある七輪塔も憲方の墓と伝わる。
明月院は、鎌倉三十三観音(30番札所)、鎌倉十井(瓶ノ井(つるべのい)別名甕ノ井(かめのい))などの鎌倉霊場、鎌倉名所巡りの対象地にもなっています。
明月院を散策しよう
境内案内図:現地パンフレットをスキャンしました。
総門から山門へ
北鎌倉駅から徒歩およそ10分、横須賀線沿いを歩いて横須賀線の踏切の手前を左に曲がり川沿いに歩くと、明月院の入り口となります。
明月院の敷地に入ったら、総門の手前で左に曲がり、茶々橋を渡って受付で拝観料を払います。受付にはその季節の見頃の花が書かれた案内があるので散策の参考にするとよいでしょう。早速ウサギとカメが出迎えてくれました。
桂橋を渡って鎌倉石の階段を登ります。ここは、アジサイの季節ともなると観光客で大賑わいとなるところ。冬場は花も少なく静かです。
山門には「福源山」と書かれた扁額が掲げられています。寺務所の入り口には行燈を持った地蔵やウサギが出迎えてくれます。
山門をくぐった右側には大きなウサギ小屋「ウサギの宇宙ステーション」があります。ここにはこの日時点で3頭のウサギが飼育されています。ウサギ小屋の側面には、仏様とウサギにまつわる悲しくも美しい物語が記載されています。
むかしむかし森の中に狐と猿と兎が仲良く暮らしていました。
ある日貧しい身なりをした老人がやってきて「私はお腹がペコペコです。何か食べ物をください」と。
狐、猿、兎の仲良し組はさっそく食べ物を探しに、狐は川で魚、猿は木の実、兎は頑張っても探せませんでした。
兎は狐と猿にたき火をしてくれと頼み、炎が真っ赤になった時、私を焼いて食べて下さいと火の中にあっという間にとびこみました。
老人は元の姿の帝釈天に戻って兎のやけどを治し月の中に住まわせ、お餅をつかせ年の初めに地上に配っています。
この兎はお釈迦様が生まれる前に兎に身を変えて修行された時のお話しです。
ウサギ小屋の前には、ネロ、モモ、そしてサラの3匹のウサギたちの名前が書かれています。サラちゃんについては、スキージャンプの選手のように、ニンジンを両手に「サラも負けないよ!」と元気にジャンプする様子が看板に描かれています。
本殿「紫陽殿」と枯山水庭園
明月院の本殿は、アジサイにちなんで「紫陽殿(しようでん)」と呼ばれています。本尊は聖観世音菩薩坐像で、1309年(延慶(えんきょう)2年)の銘があります。
紫陽殿の丸窓(悟りの窓)は、写真撮影の超人気スポット。鎌倉で最も写真映えするところと言ってもいいかもしれません。そして、振り返れば枯山水の庭園が目の前に広がります。
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開山堂・瓶ノ井・明月院やぐら
本堂を右手に見て直進し階段を登ると、正面に開山堂が見えます。階段を登り切った右手にはかわいらしい前掛けを付けた石像たち、左手には「花想い地蔵」があります。
花想い地蔵
開山堂は、方形で茅葺屋根の簡素な建物。扁額には「宗猷堂(そうゆうどう」の文字が記され、内部には開山である密室守厳(みっしつしゅごん)の像を安置しています。
開山堂に向かって左手には、明月院やぐらがあります。このやぐらは鎌倉のやぐらの中でも最大級といわれ、内部には開基である上杉憲方(うえすぎのりかた)の墓と伝わる宝篋印塔(ほうきょういんとう)が安置されています。
また、奥の壁には釈迦如来・多宝如来の二仏と十六羅漢像と思われる浮彫があり、このためこのやぐらは羅漢洞ともいわれています。
開山堂に向かって右側には、鎌倉十井(じっせい)のひとつである瓶ノ井(つるべのい)(甕(かめ)ノ井ともいう)があります。現在も利用できる現役の井戸です。
上杉憲方の墓とされるものは江ノ電極楽寺駅か近くにもあります。よろしければ下記リンク先を参照してください。
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限定公開の奥庭 ユニセフに寄付して入場
本殿裏の奥庭は、6月のハナショウブが咲く頃と、12月初旬の紅葉の頃に一般公開されます(入場料は別途)。その他の季節は非公開ですが、ユニセフに寄付することで入ることができます。
竹竿の柵を動かして奥庭に進みます。奥庭はひとつの谷戸(やと)を庭園として整備したもので、ハナショウブの花壇のほか、昭和の頃に使われた炭焼き窯やリスのための餌台などがあります。
奥庭の一角には青地蔵と赤地蔵があります。
ボクは青地蔵
私は赤地蔵
月笑軒と北条時頼の墓
奥庭を出て境内を散策しながら入り口方面を目指します。風の小径は境内を左右に横切るよう造られた小さな道。アジサイの鑑賞時にはここを通るのもよいでしょう。
明月院の茶屋である月笑軒(げっしょうけん)では、明月院の美しい緑を鑑賞しながらお抹茶などを楽しむことが出来ます。
月笑軒の主なメニュー
- 抹茶と和菓子 700円
- 甘酒 500円
- 各種ジュース・コーヒーとクッキー 600円 など
月笑軒の前を過ぎると北条時頼の廟と、その左奥には北条時頼の墓とされる宝篋印塔が、石の柵に囲まれて建っています。
明月院の花と葉
夏 アジサイとハナショウブ
明月院のアジサイは、そのほとんどがヒメアジサイという品種で、花の色から「明月院ブルー」と言われ、開花期ともなると大勢の観光客でにぎわいます。
6月上旬ハナショウブの開花期になると、通常非公開の奥庭が公開されます。
冬 ロウバイとウメ
夏のアジサイやハナショウブに比べると花の数はかなり少なくなりますが、それでも冬晴れの青空を背景にロウバイやウメが美しく咲きます。
竹林散策
明月院入り口から寺務所方面に続く車道の右側に、竹林があります。鎌倉の竹の寺として知られる報国寺や鎌倉唯一の尼寺である英勝寺と比べると小規模ですが、しばしの竹林散策はいかがでしょうか。
鎌倉唯一の尼寺でありヒガンバナの名所である英勝寺にも竹林があります。英勝寺については以下のリンクを参照してください。
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ご朱印
今回はご朱印はいただいていません。
鎌倉観光文化検定対策
鎌倉観光文化検定公式サイトに過去問の記載がある第11回(2017年度実施)以降の鎌倉観光文化検定(以下、「鎌倉検定」)2級および3級の出題の中から、明月院について、出題状況や傾向を検討します。※問題文は一部改変している場合があります。
2020年度・2021年度の鎌倉検定は中止となっていますのでご留意ください。
傾向と対策
出題傾向としては、明月院に咲く花(アジサイ・ハナショウブ)に関連するものや、やぐらに関連するものなどがあります。
- 明月院は、何の花の寺として知られているか。(第11回・3級)⇒正答:アジサイ
- 6月中旬~下旬に、〔 〕では、境内に青を基調にヒメアジサイが咲きほこることから、「〔 〕ブルー」とも称される。〔 〕 にあてはまる寺院はどこか。(第13回・3級)⇒正答:明月院
- 基壇上部に十六羅漢像の浮き彫りがあることから別名「羅漢洞」とも呼ばれるやぐらは何か。(第12回・2級)⇒正答:明月院やぐら
- 明月院のアジサイのほとんどを占める品種は何か。(第13回・2級)⇒正答:ヒメアジサイ
ほかにも、歴史・旧跡について関連あることがらの組み合わせとして「上杉憲方-明月院やぐら」の組み合わせ(第11回・2級)が選択肢となっている出題もあります。
明月院のまとめ
- 明月院は、北鎌倉駅から歩いて10分のところにある臨済宗建長寺派の寺院
- アジサイ、奥庭のハナショウブなどの季節の花や鎌倉十井の瓶ノ井、北条時頼・上杉憲方の墓など見どころたくさん。
- 日本遺産「いざ、鎌倉~歴史と文化が描くモザイク画のまちへ~」の構成資産
いかがでしたでしょうか。明月院の概要についてひととおりまとめましたが、皆さんもウサギとカメに会いに明月院にお出掛けされてはいかがでしょうか。
交通アクセス
北鎌倉駅から徒歩およそ10分
連絡先 | 福源山明月院 | 鎌倉市山ノ内189
TEL:0467-24-3437 |
鎌倉市観光協会公式サイト | 鎌倉市観光協会公式サイト(明月院) |
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参考文献・関連サイト
- 鎌倉観光文化検定公式テキスト
- 鎌倉観光文化検定公式サイト(鎌倉商工会議所)
- 深く歩く 鎌倉史跡散策 神谷道倫著 かまくら春秋社
お断り
- 日付の記載のない写真は2022年2月に撮影したものです。