金沢街道沿い、鎌倉市浄明寺にあるお寺、浄妙寺は、鎌倉五山第五位という格式の高い寺院ですが、誰でも抹茶が楽しめ、また、境内の裏には英国式の庭やアフタヌーンティーなどを楽しめる石窯ガーデンテラスなどがあり、寺院参拝以外にもいろいろな楽しみがあります。
更新状況
- 2023年12月23日:イチョウの黄葉の写真を追加
- 2022年4月10日:記事掲載
この記事の目次
浄妙寺とは
浄妙寺は、金沢街道沿い、バス停浄明寺目の前にある臨済宗の寺院で、山号は稲荷山(とうかさん)、開山は退耕行勇(たいこうぎょうゆう)、開基は足利義兼(あしかがよしかね)とされています。
源頼朝の重臣であった足利義兼は、1188年(文治4年)に退耕行勇を開山とし、極楽寺という密教系の寺として建立しました。そののち、建長寺開山である蘭渓道隆の弟子、月峯了然(げっぽうりょうねん)が住職になり、臨済宗に改められ、寺名も浄妙寺となりました。
木造退耕行勇坐像は、国の重要文化財に指定されています。
足利尊氏の父、足利貞氏(さだうじ)は浄妙寺殿と呼ばれ、中興の開基とされ、没後は浄妙寺に葬られました。
足利義満が京都・鎌倉の五山を定めた14世紀後半には鎌倉五山の第五位に列し、七堂伽藍と23の塔頭を数える大寺院となりました。
その後、永享の乱(1438年)で鎌倉公方足利持氏(もちうじ)が敗死し、その子成氏(しげうじ)か鎌倉を去ってからは衰退の一途をたどったようで、現在は山門、本堂、客殿、庫裡等で伽藍を形成しています。
浄妙寺は、鎌倉五山のほか、鎌倉十三佛(2番札所)、鎌倉三十三観音(9番札所)などの鎌倉霊場、鎌倉名所巡りの対象地にもなっています。
浄妙寺を散策しよう
境内案内図:現地パンフレットをスキャンしました。
山門から本堂へ
浄明寺バス停を降りたら目の前の路地を進むと、浄妙寺の入り口となります。正面向こうには浄妙寺の本堂が見えています。受付で拝観料を納めて敷地内に入ります。
本堂に続く道の両側には、盛土にコケとドウダンツツジ、ウメなどの木が植えられています。この日はフクジュソウも可愛い黄色い花を咲かせていました。参道を進むと、左手には花塚やボタン園などもあります。
階段を登り本堂の前に出ます。浄妙寺の本堂は、禅宗寺院であるものの高床の造りで、方丈形式の仏殿となっています。1748年(寛延元年)火災に遭ったのち、1754年(宝暦4年)に再建されたといわれています。
境内は国指定史跡となっています。
喜泉庵で抹茶を一服
「茶堂 喜泉庵」と書かれた木の立札の前を進みます。天正年間(1500年代)、僧侶が一同に茶を喫した喜泉庵があったとされ、平成3年に復興されました。
庭園はスギゴケを主とした枯山水で、水琴窟もあります。この庭を鑑賞しながら抹茶をいただくことが出来ます。先ほどの木の立札の近くにある透明なケースの中に「メニュー」があるので確認しておきましょう。
喜泉庵の主なメニュー(税込)
- 抹茶と美鈴の生菓子 1,100円
- 抹茶と干菓子 660円
喜泉庵の玄関を入り料金を払って座敷に上がります。お茶席は畳の上に毛氈を敷いた席、またはテーブル席、どちらでも好きな方を選びましょう。お茶席内の床の間や庭園などを眺めながら抹茶をいただきます。
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足利貞氏と足利直義の墓
本堂の裏側には、開山である退耕行勇を祭った開山堂があります(非公開)。本堂裏側の墓地には中興の開基である足利貞氏の墓とされる、1392年(明徳3年)の銘がある宝篋印塔があります。
石窯ガーデンテラスに続く道を歩きます。石窯ガーデンテラスに入るところを左に曲がり、案内に従って進みます。
間もなく足利直義の墓とされるところに出ます。ここは延福寺跡で3つのやぐらがあり、向かって左側が足利直義の墓とされています。
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石窯ガーデンテラス
石窯ガーデンテラスは浄妙寺の境内にある洋館レストランで、英国式庭園を眺めながら、鎌倉野菜をふんだんに使ったメニューや、石窯で焼いた自家製のパン、アフタヌーンティーなどを楽しむことが出来ます。
石窯ガーデンテラスの洋館は、1922年(大正11年)にドイツ人の建築家によって、当時の貴族院議員であった犬塚勝太郎氏の自宅として建てられました。以前は非公開であったため、歳月とともに傷みも激しくなっていました。大切な文化遺産でもある洋館を生き返らせ、長く保存したいとの考えから、2000年に石窯ガーデンテラスとして営業を始めました。
***
石窯ガーデンテラスの敷地を出て、散策路を歩きます。散策路からは石窯ガーデンテラスの洋館や、衣張山(きぬばりやま)の姿も見ることが出来ます。
衣張山の伝説
源頼朝の住居があった大倉の館から南東の方角を望むと衣張山を見ることが出来ます。夏の暑い日、頼朝はこの山を白絹で覆わせて雪山に見立て、歌を詠み、宴会を開いて夏の涼をとったとされます。衣張山の名前はこの伝説に由来するといいます。
鎌倉の名前の由来 鎌足稲荷神社
山門に向かって右側の道を進むと鎌足稲荷神社と呼ばれる小さな祠があります。藤原鎌足が鎌槍を埋めたという伝承があり、「鎌倉」という地名の起源の地といわれています。
藤原鎌足は、646年の鹿島神宮参詣の際に由比の里(現在の鎌倉)に宿泊しました。その際、夢に白髪の老人が現れて「不思議な力のあるこの鎌槍をこの地に埋めたならば、天下はよく治まるであろう」というお告げを受け、白狐に導かれるまま鎌槍を浄妙寺の裏山に埋めたといわれています。
浄妙寺の花と葉
秋 イチョウ黄葉
11月下旬から12月になると本堂前の黄葉が見事に色づきます。
冬 ウメ
本堂手前の参道沿いに数本のウメの木があります。
本堂前のマツ
本堂手前に数本のマツの木が植えられています。季節ごとに咲く花と違って華やかさはありませんが、本堂屋根の緑青色を背景に手入れの行き届いたマツの緑が映えています。
ご朱印
今回はご朱印はいただいていません。
鎌倉観光文化検定対策
鎌倉観光文化検定公式サイトに過去問の記載がある第11回(2017年度実施)以降の鎌倉観光文化検定(以下、「鎌倉検定」)2級および3級の出題の中から、浄妙寺について、出題状況や傾向を検討します。※問題文は一部改変している場合があります。
2020年度・2021年度の鎌倉検定は中止となっていますのでご留意ください。
傾向と対策
浄妙寺に関する出題はほとんどありません。また、衣張山に関する出題が1問ありました。
- 夏の日差しが強いある日、源頼朝が館から見える山を白絹で覆わせて雪山に見立て、歌を詠み、宴を開いて夏の涼をとったとされる伝説により名付けられた山はどこか。(第12回・3級)⇒正答:衣張山
- 源頼朝の重臣足利義兼が退耕行勇を開山として建立した密教系寺院の極楽寺が始まりとされる、鎌倉五山の寺院はどこか。(第13回・3級)⇒正答:浄妙寺
浄妙寺のまとめ
- 浄妙寺は、バス停浄明寺の目の前にある臨済宗建長寺派の寺院
- 夏のアジサイなどの季節の花や足利貞氏・直義の墓など見どころたくさん。
- 喜泉庵で抹茶をいただき、石窯ガーデンテラスでアフタヌーンティーを楽しむことも
- 日本遺産「いざ、鎌倉~歴史と文化が描くモザイク画のまちへ~」の構成文化財
いかがでしたでしょうか。浄妙寺の概要についてひととおりまとめましたが、もしも気になるようでしたら浄妙寺にお出掛けされてはいかがでしょうか。
交通アクセス
浄明寺バス停すぐ。鎌倉駅から徒歩およそ20分
連絡先 | 稲荷山浄妙寺 | 鎌倉市浄明寺3-8-31 TEL:0467-22-2818 |
鎌倉市観光協会公式サイト | 鎌倉市観光協会公式サイト(浄妙寺) |
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参考文献・関連サイト
- 鎌倉観光文化検定公式テキスト
- 鎌倉観光文化検定公式サイト(鎌倉商工会議所)
- 深く歩く 鎌倉史跡散策 神谷道倫著 かまくら春秋社
- 石窯ガーデンテラス
- 喜泉庵(石窯ガーデンテラス)