「長谷観音」として広く親しまれている長谷寺は、江ノ電長谷駅から徒歩およそ5分ほどのところにある、鎌倉を代表する寺院のひとつです。
鎌倉時代が始まる前に創立されたといわれる古刹でもある長谷寺には、四季折々に美しい花が咲き、季節に応じてライトアップなどの行事も行われています。
本尊は高さ9メートルを超える我が国最大級の十一面観音菩薩像。721年(養老5年)に徳道上人により造立したと伝わり、室町時代の将軍足利尊氏が金箔を施したとされます。また、観音菩薩としてはもちろん、地蔵菩薩としてのご利益があるともいわれています。
その長谷寺の本尊を祭る本堂(観音堂)の隣りには、長谷寺の寺宝などを納めた観音ミュージアムがあります。
更新状況
- 2023年3月7日:記事掲載
この記事の目次
長谷寺観音ミュージアムとは
観音ミュージアムは、長谷寺の本尊である十一面観音菩薩像がある観音堂の隣りにある「観音信仰の総合博物館」。
長い歴史を持つ長谷寺の文化財を始め、映像やタッチパネルなどの最新式展示手法を取り入れて、観音信仰の深さと広さを体感することができる施設となっています。
観音ミュージアムに入ってみよう!
境内案内図:長谷寺公式サイトから引用
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入館料を払って館内へ まずは1階から
観音ミュージアムは長谷寺の本堂である観音堂のすぐ隣りにあります。入場券は
- お守りなどを売っている長谷寺授与所(有人入館券売場)
- 出入口扉に向かって左側のキャッシュレス券売機
上記のいずれかで買い求めることができます。券を購入したら早速中に入ってみましょう。
常設展示は写真撮影可能です。
映像展示室・エントランスギャラリー
観音ミュージアム最初の部屋は映像展示室兼エントランスギャラリーです。
正面のスクリーンには長谷寺に関する映像が流れ、右側は「ビジブル・ストレージ(見える収蔵庫)」となっています。
ここビジブルストレージでは保存と展示の両立のために収蔵庫の一部を開放し、長谷地域ゆかりの大型の仏像などを展示しています。
この日は向かって左に勢至菩薩坐像、右に弥勒菩薩座像が展示されていました。
左(スマホでは上)の勢至菩薩坐像は、伝承では鎌倉幕府の御家人である畠山重忠の守り本尊であるとか、かつて長谷にあった誓願寺(せいがんじ)にあったとの説があるとのことです。
また、17世紀後半に本尊十一面観音菩薩や長谷寺伽藍の再興が進められ、右側(スマホでは下)の弥勒菩薩座像の製作もこうした事業の一環とみられるとのことです。
鎌倉市指定文化財 板碑
映像展示室を出て階段手前右側には2枚の板碑が展示されています。
ここにある板碑は、一枚が1262年(弘長2年)、もう一枚が1308年(徳治3年)の銘が刻まれており、鎌倉地方最大級の大きさを持つものです。
板碑は主に故人の冥福を祈るために作られた石製塔婆塔です。鎌倉時代の中期から室町時代にかけて、北海道から鹿児島県まで全国で作られました。板碑の作例は特に関東地方に集中しており、その多くは「武蔵型板碑」と呼ばれる形式のもので、関東の武士が大きく関与してたと考えられます。 -東京国立博物館平成館1階 「日本の考古」に掲示されている板碑の案内より。-
国指定重要文化財 梵鐘
板碑を見た後は第1展示室に入ります。壁には映像展示があり、長谷寺の成立を表す伝承が、紙芝居のようにわかりやすく説明されています。
中央に設置されているのは国指定重要文化財の梵鐘です。
この梵鐘には「文永元年」(1264年)の銘があり、鎌倉では浄楽寺、建長寺の梵鐘に次ぐ古いものとなっています。
また、「新長谷寺」の銘があることから、当初は奈良の長谷寺に対して鎌倉の長谷寺が「新長谷寺」と呼ばれていたことがわかります。
梵鐘の横には長谷寺の開山である徳道上人坐像や神奈川県指定文化財である「鰐口」と朝廷ゆかりの扁額があります。
圧巻の三十三応現身立像
隣りの部屋にはいると中央に十一面観音菩薩像(前立観音)と、それを取り巻くように観音菩薩三十三応現身立像があります。
ここにある十一面観音菩薩像は、かつて本堂(観音堂)の本尊十一面観音立像の前に祭られていたもので、そのため「前立観音」の別名があります。
本尊と同じく右手に錫杖、左手に蓮の花が挿してある花瓶を持つこの形式は「長谷寺式観音」と呼ばれています。
圧巻なのはこの前立観音を取り巻く観音菩薩三十三応現身立像です。観音経では、観世音菩薩は衆生に応じて相応しい三十三の姿に形を変えて人々を救済するとされます。
この観音ミュージアムにある観音菩薩三十三応現身立像は室町時代の作で、33体揃ったものとしては全国的にも大変珍しく貴重なものとなっています。
観音ミュージアム 2階へ移動
階段を上って2階に進むと1階からの吹き抜けとなっており、1923年(大正12年)の大正関東地震(関東大震災)で被災した本尊の光背残欠と、先ほど1階で見た前立観音の頭上面を見ることができます。
2階中央部分は企画展示コーナーとなっています。ここでは季節に応じた企画展示が行われています。
この日の企画展示
もう一つの重要文化財 十一面観音懸仏
懸仏(かけぼとけ)とは、神仏習合思想に基づき、御神体である鏡の正面に仏像(御正体(みしょうたい))を表したものです。ここ長谷寺には6体の十一面観音懸仏が伝来しており、国の重要文化財に指定されています。
ここにある6枚の懸仏は、いずれも右手に錫杖を持ち(あるいは持っていた痕跡があり)、岩座上に立っていることが特徴であり、「長谷観音」を意識して奉納されたものである考えられています。
いずれも鎌倉時代末期から室町時代の様式を示しているうえに、通常の懸仏と比べて大型です。
これらの懸仏は、大型の懸仏を掲げるのに見合うだけの大伽藍と、その伽藍が必要なほどの巨大な観音像を示唆しており、長谷寺の隆盛を端的に示す資料であると考えられています。
長谷寺 観音ミュージアムのまとめ
- 観音ミュージアムは観音信仰の深さと広さを体感することができる観音信仰の総合博物館
- ともに重要文化財に指定された梵鐘や十一面観音懸仏などを収蔵
- 33体揃ったものとしては全国的にも珍しい観音菩薩三十三応現身立像は圧巻!
いかがでしたでしょうか。鎌倉でも有数の人気の寺院である長谷寺の観音ミュージアムの概要についてまとめましたが、お時間があればお出掛けされてはいかがでしょうか。
交通アクセス
江ノ電長谷駅から徒歩およそ5分
連絡先 | 海光山慈照院長谷寺 鎌倉市長谷 3-11-2 TEL:0467-22-6300 |
受付時間 | 9時から16時(16時30分閉館) |
休館日 | 無休 ※展示替えや設備点検のため臨時休館あり |
入館料 | 大人(中学生以上)300円 小人(小学生)150円 ※長谷寺拝観料別途要 |
電話 | 0467-22-6100 |
公式サイト | 観音ミュージアム公式サイト |
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参考文献・関連サイト
- 海光山慈照院長谷寺公式サイト
- 現地案内パンフレット