光則寺は、江ノ電長谷駅から北に進み、長谷寺参道入り口信号を少し進んだところを左に曲がった先にあるお寺。近くの人気寺院である長谷寺や鎌倉大仏の高徳院と比較すると、観光客がたくさんいるというわけではなく静かな所です。
それでも、春に咲くカイドウを始めとした四季折々に咲く花や、日蓮の弟子である日朗にまつわる土牢など見どころの多い寺院です。
更新状況
- 2023年12月23日:写真追加(山門下の拝観料箱、立正安国論御勘由来の石碑、宮沢賢治石碑、大橋太郎通貞土籠、サクラ)、写真差し替え(カイドウ)
- 2023年3月18日:記事掲載
光則寺とは
光則寺(こうそくじ)は、山号を行時山という日蓮宗の寺院で、開山は日蓮の弟子である日朗(にちろう)、開基は北条時頼の家臣であった宿谷光則(やどやみつのり)です。
日蓮は光則を通じて鎌倉幕府の前の執権北条時頼に「立正安国論」を提出しましたが、日蓮の考えは幕府に受け入れられることはありませんでした。
その後日蓮は佐渡に流されることとなり、その際に弟子の日朗や信者の四条金吾頼基らも捕らえられました。
光則は日朗らを自宅裏山の土牢に幽閉しましたが、自らの不運を嘆くこともなく弟子の身を案ずる日蓮に心打たれ、やがて日蓮宗に帰依しました。
光則は、日蓮が身延に去った後に自らが監視していた日朗を開山とし、父の名「行時」を山号、そして自分の名「光則」を寺号として自宅を寺にしたのが光則寺の始まりです。
山門をくぐって光則寺の境内へ
江ノ電長谷駅から歩いて長谷寺参道入り口の交差点先の道を左に曲がり緩やかな坂を進むと、右に「行時山」左に「光則寺」と彫られた石柱があります。ここをさらに進むと光則寺の山門に到着します。
緑青色の屋根と朱塗りの柱や梁の対比が美しい山門が見えてきました。拝観料(100円)は山門下の箱に入れます。
この箱には境内の花の位置などを記した地図があるので、自分のスマホで撮影するか、二次元コードを読み込んで地図のファイルをスマホにダウンロードするとよいでしょう。
立正安国論御勘由来とカイドウの巨木
山門を入ると正面の植え込みの中に立正安国論を時頼に提出した経緯を表した「立正安国論御勘由来」の石碑があります。
「立正安国論御勘由来」の石碑後側、本堂手前右側には樹齢200年ともいわれ鎌倉市の天然記念物に指定されているカイドウの巨木があります。カイドウが咲くころにはこの花目当ての観光客が大勢訪れ、光則寺の境内が1年で一番にぎわいます。
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光則寺本堂と宮沢賢治の碑
光則寺の本堂は江戸時代の1650年(慶安3)年に建立されたもの。大正関東地震(関東大震災)で被害を受け、修復されましたが、柱は当時のものを使っているそうです。
本堂左手植え込みには宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を刻んだ詩碑があります。宮沢賢治が熱心な法華経の信者だったことにちなんで、檀家からの寄進を基に建立されたそうです。
動物慰霊の碑とクジャク
本堂向かって左側に自動車が入れる少し高くなった道路があります。その道路沿いにある金網の張られた建物にはクジャクが飼われています。
たまにクジャクが大きな声で鳴くことがありますが、クジャクがいることを知らないとびっくりしてしまいます。
クジャク小屋の隣りには動物慰霊碑があります。毎年春と秋の彼岸の時期に動物慰霊祭が執り行われます。
日朗が幽閉された土の牢屋
本堂向かって右側の通路を進み寺務所の前を通り過ぎると階段があります。この階段を上ると途中右側に開基である宿谷光則の墓所とされる場所があり、比較的新しい五輪塔があります。
階段をさらに上ると広場があり、崖の壁面には日朗が幽閉された土牢(土籠)があります。
土牢には木の格子があり中に入ることはできません。格子の間から内部を覗いてみると、中央に石像、その両側には二対の五輪塔があります。
土牢の脇には土牢御書(つちのろうごしょ)の石碑があります。1271年(文永8年)、佐渡配流が決まった日蓮が弟子の日朗に送った手紙の全文が記載されています。
土牢御書の見学が終わったら境内に戻ります。
土牢前の広場からは本堂などが見えるようですが、私が訪れたこの日は材木が積み上げられていて景色を眺めることはできませんでした。
大橋太郎通貞土籠
大橋太郎通貞は平家の武将で、源頼朝に捕らえられ、土の籠に12年入れられたという伝承があります。
境内左手奥に「大橋太郎通貞土籠」と刻まれた石塔があり、この横にある階段を登ります。
写真のロープを使って斜面を登るか左に大きく回って急斜面をよじ登ったところに土籠があります。
実はこの穴は古墳時代末期の横穴墓であるといい、内部には小さな五輪塔があります。たまたまここにあった横穴墓が大橋太郎通貞の伝承と結びついたものかもしれません。
境内を散策
土牢から戻ったら境内をひと回り。本堂に向かって左手には池もあり、四季折々の花を楽しむことができます。疲れたら石のベンチでひと休みしてもいいでしょう。
ひととおり境内を回ったら、山門をくぐって光則寺を後にします。
光則寺の花
境内はよく整備され、春のカイドウを始めとして四季折々の花を楽しむことができます。
春 サクラ
下のサクラの写真は光則寺境内ではなく、手前の参道に咲いているものです。山門脇にはシダレザクラもあります。
春 ミツマタ
3月中旬には淡いだいだい色の可愛らしい花を咲かせます。
近くの主な見どころ
鎌倉でも人気の長谷地区はここ光則寺以外にもたくさんの見どころがあります。詳しくは下記リンク先を参照してください。
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ご朱印
今回はご朱印はいただいていません。
鎌倉観光文化検定対策
鎌倉観光文化検定公式サイトに過去問の記載がある第12回(2018年度実施)以降の鎌倉観光文化検定(以下、「鎌倉検定」)2級および3級の出題の中から、光則寺について、出題状況や傾向を検討します。※問題文は一部改変している場合があります。
2020年度・2021年度の鎌倉検定は中止となっていますのでご留意ください。
傾向と対策
出題傾向としては、3級では12回と16回で全く同じ問題が出題されるなど、基本的なものにとどまっています。2級の動物慰霊祭については彼岸の時期に開催されると覚えておけばよいでしょう。
- 光則寺は、神奈川県の「名木 100 選」にも選ばれた、樹齢 200 年余りの巨木などが植えられていることから、何の寺として知られているか
(第12回、16回・3級)⇒正答:カイドウ - 光則寺の裏山には、開山が幽閉された土牢と「土牢御書」の石碑が今も残されている。この開山とは誰のことか。(第13回・3級)⇒正答:日朗
- 光則寺の裏山には、開山の日朗が幽閉された土牢と「土牢御書」の石碑が今も残されているが、この「土牢御書」を書いたのは誰か。(第16回・3級)⇒正答:日朗
- 鎌倉市の天然記念物であり、「かながわの名木 100 選」にも選ばれているのは何か。(第12回・2級)⇒正答:光則寺本堂前のカイドウ
- 光則寺で動物慰霊祭が行われるのは何月下旬と何月下旬か。(第13回・2級)⇒ 正答:3 月下旬と 9 月下旬
※「かながわの名木100選」については「一般社団法人日本樹木医会神奈川県支部」のウェブサイトを参照してください。
光則寺のまとめ
- 光則寺は、江ノ電長谷駅から徒歩およそ6分のところにある日蓮宗の寺院
- 境内は鎌倉市指定天然記念物のカイドウを始めとして四季折々の花が美しく咲く。
- 日蓮の弟子日朗が幽閉された土牢が今も残る。
いかがでしたでしょうか。光則寺の概要についてひととおりまとめました。普段は静かですがカイドウが咲く季節は大勢の参拝客でにぎわう光則寺にお出掛けされてはいかがでしょうか。
交通アクセス
江ノ電長谷駅から徒歩およそ6分
連絡先 | 行時山光則寺 鎌倉市長谷3-9-7 TEL:0467-22-2077 |
鎌倉市観光協会公式サイト | 鎌倉市観光協会公式サイト |
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参考文献
- 鎌倉観光文化検定公式テキスト
- 鎌倉観光文化検定公式サイト(鎌倉商工会議所)
- 深く歩く 鎌倉史跡散策 神谷道倫著 かまくら春秋社